コドモ以上、オトナ未満。
会場の出入り口の扉に手を掛けていたお母さんに駆け寄って、あたしは言葉を探す。
違うんだよ……わざとお母さんに冷たく当たろうと思ったわけじゃないの。
あたし……本当は、感謝してるんだ。
だって、お母さんがいなければ、あたし……
「――お母さん。あたしのこと、生んでくれて、ありがとう」
今、こうして胸張って生きてられるのも。
モデルとして、たくさんの人に応援してもらえるのも。
かけがえのない大切な人たちに……真咲に出逢えたのも、全部。
あたしをこの世に生んでくれた、お母さんのおかげだから。
「湖々……私、あなたに、全然……。全然、なにもしてあげられなかったのに……」
ぶわっとお母さんの目に浮かんだ涙。
それを見ていたら、あたしも今度は冷静じゃいられなくて、思わずもらい泣きしてしまう。
「そんなの、関係、ないよ……お母さんは、あたしのお母さんだもん……っ」
今は一緒に住んでないけど。
もう、二度と会わないかもしれないけど。
お母さんは、あたしのお母さん。
その事実だけは、絶対に揺らがないから。
「……湖々、一度だけでいい……お願いがあるの。少し、抱き締めさせて……?」
「うん……いいよ」
あたしからも腕を回して、あたしより少しだけ背の低いお母さんと、強く強く抱きしめあう。
髪に顔を埋めたら、お母さんのにおいがした。
それが懐かしくて、せつなくて……
記憶の中だけと割り切れていたはずのお母さんの存在が、とてつもなく愛しくなって。
あたしはお母さんに抱きついたまま、子どもに戻ってしまったかのように、しばらくしゃくりあげていた。