コドモ以上、オトナ未満。
「……げ。降ってきてる」
本当なら生徒は立ち入り禁止のはずの屋上。
けれど鍵が壊れているというのを知っているあたしは、そこでたまに授業をサボる。
今日もそうしようと思っていたのに、階段を上がりきったところにある重たい扉を開けると、ちょうど雨がぱらぱらと降りだしたところだった。
どうしよ……
保健室の先生は仮病だってわかるとベッド貸してくれないし、帰宅部の私にはこういうときに使える部室もないし……
「――行かないの? 屋上」
ふいに背後から掛けられた声。
振り向くと、さっき黒板に名前を書かれていた同士である、同じクラスの真咲がそこにいた。
デカいデカいって悪口言われるあたしよりも、ずっと背の高い真咲。
彼はその身長と、それから整った顔立ちを武器にモデルの仕事をしていて、だからときどき学校を休んだり遅刻して来たりする。
「……だって、雨」
「俺、濡れなくて済む場所知ってる」
真咲はそう言うと私を追い越して、開けっぱなしの扉の向こう側へと行ってしまう。
その背中に見えるのは、いつも彼が肩から斜めに掛けてるネイビーのメッセンジャーバッグ。
カバン、持ってるってことは……今学校来て、教室行かずにここ直行してきたってことかな。
そうだったら、実行委員のこと知らないだろうから、教えてやろ。
あたしは真咲を追いかけて、小雨がその床に点々とちいさな水玉模様をつくる屋上へと降り立った。