コドモ以上、オトナ未満。
大声をあげたあたしをたしなめるように、真咲が両手をあたしの肩に置いた。
「こんなことして笑えるヤツらと、対等に言い合ったって仕方ないよ。俺らは何も悪いことしてない。それを自分らがちゃんとわかってれば平気」
「真咲……」
昨日は、あんなコドモみたいな顔してたのに。
なんでだろう、今はこのクラスで真咲が一番、オトナに見える。
「あ、でも、ありがと」
「……なにが?」
「俺のために怒ってくれたの、超うれしい」
かぁぁっと、顔に熱が集中していくのが分かった。
そういえば、さっきはあたしらしくない姿を見せてしまった。
他人のために、必死になったのなんていつぶり?
……もしかしたら、初めてだったかもしれない。
恥ずかしすぎていたたまれないあたしを助けるように、前の扉から恩田先生が入ってきて朝のホームルームが始まった。
先生はいつもよりなんだかにこにこしていて、その理由をクラスメイトの一人が尋ねると、「昨日子供が産まれたんです」と教えてくれた。
おめでとうございます!と盛り上がる教室のはじっこで、あたしはつまらなそうに頬杖をついていた。
だって、子供が産まれることがそんなにおめでたいことなのかと心底不思議だったから。