コドモ以上、オトナ未満。
モデル仲間に誘われて
「――でね、傷ついたオオカミが目を覚ますまで、女の子はずっと看病してあげるの」
「うん……それで、オオカミは?」
「……この先は、まだ考え中」
「気になるなー。決まったらすぐ教えてよね」
最近、カナコが部活のない日は、電車通学の彼女が使っている学校の最寄駅まで、こうして話しながら歩くのが日課。
その内容はほとんど、カナコがスケッチブックに描いている絵本に関すること。
彼女は絵本作家になるのが夢で、スケッチブックの中にその世界を広げているらしい。
「……ココちゃんは、笑わないんだね」
「なにを?」
「高校生にもなって、絵本とかダサいって」
「え……だって。別にダサくなくない?」
むしろ、夢なんて持てずに、この先見つかる気もしないあたしの方が、よっぽどダサいよ。
カナコみたいに、目をきらきらさせて話せる何かがあること、すごく羨ましい。
「……真咲くんの言ってたとおりだ」
背の低いカナコが、メガネの奥でにっこり笑ってあたしを見上げる。
「ほら。ココちゃんのこと、本当はすっごくいい子って」
「……あー、あれね。別にあたしいい子でもなんでもないのに、アイツ何言ってんだろうね」
授業はさぼるし(最近は恩田先生の笑顔の圧力が怖くてめっきりさぼれなくなったけど)、愛想はないし、カナコと真咲以外に友達、いないし……
あたし自身、自分のいいとこなんて、ひとつも思い浮かばないのに。