コドモ以上、オトナ未満。

「俺には、もう湖々しかいないからさ――――……」


頼りなく眉毛を下げ、ネクタイを緩めるお父さん。

ズキンと胸に痛みが走り、同情と、それからそんなことを娘に言ってしまうお父さんを煩わしいと思う気持ちがせめぎあって、あたしはぷいと顔を背けてしまう。


お母さんに出て行かれたお父さんを、かわいそうだとは思うけど。

娘のあたしに、お母さんの代わりを求めるのはやめてよ……


「湖々、今日は一緒に何か食べに行くか？」


すっかり機嫌のよくなったらしいその明るい声が、逆にいら立つ。

あたしは少しだけ後ろを振り返り、冷たく言った。


「……いい。お腹すいてないから」


お金だけ置いて行く、いつものお父さんのやり方もキライで。

だからといって、一緒にゴハンを食べに行くのも拒否。

わがままだって、自分でもわかってるのに、素直には、なれない……


「……そうか。じゃあ何か買ってくるから、お腹がすいたら降りて来なさい」


わかった、とひと言口にすればいいだけなのに、あたしはそれにすら返事を返さず、二階の自分の部屋に入ってバタンとドアを閉めた。


あたし、何がしたいんだろ……

やっぱり、家にいるよりも、真咲の隣にいる方が落ち着く。


ソウルメイト――――真咲は、あたしと同じように居心地の悪い自分の家で、今何を思っているのかな……