コドモ以上、オトナ未満。


「わかんないから教えて」

「えー、ナイショ。ココの好きな人教えてくれたら言ってもいいけど」


……あたし? そんな交換条件、無意味だよ。

だってあたしに好きな人なんているわけないじゃん。

クラスでは浮いてて、部活もバイトもしてなくて、毎日アンタかカナコくらいしか話し相手のいないあたしに。


「……そんな人はいません」

「だよねー。ココってそんな感じ。つか今まで誰かを好きになったことってあるの?」

「……ないかも」

「じゃあ、今のココがもし誰かを好きになったら、それが“初恋”なんだ?」


初恋……ねぇ。

自分の両親とか、学校できゃっきゃはしゃぐ女子とか。

そういう周囲を見る限り、恋愛なんてしたら、ただでさえメンドクサイ毎日に拍車がかかりそうって思っちゃうから、一生しなくてもいいけど。


「だね。……とーぶんなさそうだけど」


つまらなそうに言って、進行方向を見つめると、その先に可愛いパン屋さんが見えた。

前にカナコが、あそこのベーグル美味しいって言ってたとこかも。

あたしもお腹空いてきた。

……花より団子。恋愛談義よりベーグルだ。



「真咲、あたしあそこのお店行きたい」

「はいはい」



結局、あたしと真咲はこのままの関係が一番よさそうだ。


夏休みも、たまには会ってくれるかな。

うだるような暑さとか宿題とかお父さんのこととか。


山積みの憂鬱も、アンタと分け合えば、たぶん少しはましになるから――――。


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