コドモ以上、オトナ未満。
3
疑似デート
七月最後の週の水曜日。
午後の空は真っ青で、いいお天気。
約束の時間に指定されたカフェの前に行ってみると、そこにはたくさんの人がいて、撮影に使うのであろう機材が車から降ろされているところだった。
「ココちゃーん!」
こちらに大きく手を振るのは、あたしをこの仕事に誘った張本人、大森賢人だ。
前に会った時よりもしっかりセットされた髪、それに着こなすのが難しそうなカラフルな服に身を包んだ大森は、制服の時よりは少しカッコよく見えた。
「今日はよろしくね! ココちゃんも早速着替えておいで」
路上に停まる大きなワゴンを指さして、大森が言う。
「着替えるって……」
どんな服に? そしてあの車の中でどうやって?
あたしが不安げな顔をするのと同時に、大森の後ろから三十代くらいの女性がスッと出てきて、あたしを車の中へと誘導してくれた。
周りにいるスタッフさんらしき人たちとお揃いのTシャツを着ているその女性は、車内でハンガーににたくさん掛けられた服の中から、あたしの着るらしい服を選ぶと、気さくな調子で話しかけてきた。
「今日は依頼を引き受けてくれてどうもありがとう。さすが大森くんの選んできた子だわー。スタイル抜群ね」
「い、いえ……」
「着替えたら外に出てきてね。それからメイクして、今日の流れを説明するから」
……もう出て行っちゃった。
あたしもさっさと着替えないと、周りに迷惑だよね……