コドモ以上、オトナ未満。




「……あのー、ココちゃん? 伊達(だて)さんの声、聞こえてるよね?」

「聞こえてる」

「じゃあ、笑ってみよ? ほら、デートなんだし、ねっ」


大森にそう言われれば言われるほど、あたしの眉間にはシワが刻まれる。

ちなみに“伊達さん”というのは、今日の撮影で写真を撮ってくれる女性カメラマンの名前だ。


今、カフェの店内で、仲良くお茶するシーンを撮ってる最中なんだけど……

あたしがうまく笑えずにいるから、まるで喧嘩してるカップルみたいに見えてしまってるらしい。


何をやっても笑顔にならないあたしに大森はひとつため息をつくと、「よしっ」と膝を叩いて席から立った。


「すいません。ココちゃん緊張してるから、ちょっと休憩させてあげたいんですけど」


そう言うと、周りのスタッフさんたちに頭を下げる大森。

彼が首から下げてるシルバーのネックレスがチャラ、と音を立てる。


「あ、あの! あたし、もうちょっと頑張るから……っ」


まさか、大森がそんな行動に出るなんて意外だった。

っていうか、自分が不甲斐ないせいで他人に頭を下げてもらうなんて、カッコ悪すぎる!


< 47 / 211 >

この作品をシェア

pagetop