コドモ以上、オトナ未満。
慌てて立ち上がったあたしに、大森が自分のかぶっていたキャップをぽすんと乗せて言う。
「今のココちゃんじゃ無理。このまま撮影長引かせて迷惑かけるより、気分転換してからびしっと決めてよ」
「……っ。わかっ、た」
迷惑……って言われたのは、結構キツかった。
でも、大森の言う通りだ。このままじゃラチがあかない。
テキトーそうに見えて仕事には真剣な大森のことを、あたしはちょっと見直した。
それから、外の空気を吸おうと店外に出たあたしと大森。
すると道路をはさんで反対側の通りを、真咲とモデルの女の子が歩きながら何か食べていて、その姿を撮影されていた。
「……ムカつくよなぁ」
遠目にそれを見ながら、大森がぼそっと呟く。
「何が?」
「心矢だよ。俺らの出てる雑誌で、人気投票いつもアイツが一番なんだ。でもアイツ、“モデルの仕事はやりたくてやってるわけじゃない”とかスカしたこと言いやがる。
……真剣にやってる俺らをバカにしてんのかよ」
苦々しく言って、舌打ちをした大森。
あたしは真咲の家庭の事情を知ってるから、それは違うってわかるけど……
大森にしてみたら、その発言は確かに気に入らないかもしれない。
大森は、この仕事、本当に好きみたいだもん。