コドモ以上、オトナ未満。
月と太陽
すべての撮影が終了し、私服に着替えてワゴン車を降りると、真咲と大森が二人であたしを待っていた。
「ココ、初めての撮影体験はどうだった?」
「う、ん……まぁまぁ、かな」
「まぁまぁじゃねーだろ。ココちゃん、素人とは思えないくらい可愛かったし」
大森にそんな風に褒められると、さっきの撮影中の告白が蘇ってきてしまう。
いきなり『本物のカップルになっちゃわない?』と言い出した彼に、あたしは『急にそんなこと言われても』と答えを濁し、逃げたつもりだったんだけど……
『俺、付き合ってからでも好きにさせる自信あるよ。だからもしココちゃんが今好きな人とかいなければ、俺にチャンスちょうだい?』
男の人に告白されるのは初めてのことじゃなかったけど、こんな自信満々なセリフを言われるのは初めてだった。
でも、大森らしいなと思ったし、あたしは今のとこ好きな人なんていないし、大森には今日一日で、かなり好感を持った。
……それに。
太陽みたいな大森に、ちょっと憧れみたいなものを感じる部分があって。
どうしてだろうと思ったとき、こんな考えが浮かんだんだ。
あたしや、それから真咲みたいな人間は、太陽の光を受けないと輝けない、月なんだって。
それも、欠けてる部分の多い、痩せた三日月。
満月になることに憧れて太陽に近づきたくなるのは、当然のことなのかもしれない。
そう思ったあたしは、静かに言ったんだ。
『……わかった』――――って。