コドモ以上、オトナ未満。
「ココ、このあと暇なら京香さんとこ行かない? プチ打ち上げっつーか、お疲れさん会してもらおうよ」
そう言って、真咲があたしの手を握ろうとしたのを、大森は見逃さなかった。
その腕をぐっとつかんであたしから引き離すと、真咲をにらみつける。
「……? なんだよ賢人。もうデートごっこは終わっただろ」
「“ごっこ”――はな。でも、これから俺ら本物のデートするから、お前とはここでバイバイ」
「……は?」
真咲が、心底不思議そうに首を傾げる。
そして大森の方からあたしに視線を移して説明を求めるような表情をするから、あたしはなんだか気まずくてぷい、と目をそらした。
「……ココ?」
「ま、今まで“友達として”彼女の側にいたお前はフクザツな心境かもしんねーけど、もうココちゃんは俺のだから、今後あんま馴れ馴れしくすんなよな」
「いやいや、意味がわかんねーって。……なぁココ。冗談だろ?」
真咲は、あたしと大森とのことが全然信じられないらしい。
……そりゃそうだよね。
大森との初対面はあんまり印象のいいものではなかったし。
初恋どうこうって話をしたときも、あたしに当分その予定はない的なこと言った気がするし。
……でも、冗談じゃないんだよ。
別に大森を好きになったわけじゃないけど、彼ならなんとなく、あたしを憂鬱すぎる毎日から、明るい世界へ連れ出してくれる気がしたの。
だから――
「……ホント、だよ。あたし、大森と付き合ってみることにした」