コドモ以上、オトナ未満。
京香さんの言った通りの文面を、つとめて普通な感じで送ってみたら、返事はすぐに来た。
そして、俺は、バクチに負けた。
「……っざけんなよ」
賢人からの返信を見るなり、バン!と音を立て画面を伏せるようにスマホを置いた俺。
一瞬だけしか見なかったはずなのに、添付されてた画像がまぶたの裏にくっきり浮かび上がる。
「……壊れるわよ? 携帯」
「別に壊れてもいいし」
すっかり投げやりになってしまった俺に、呆れたような視線を向けてきた京香さんは、カウンターの上のスマホを取って俺の頭を一度小突くと、こう言った。
「今日はもう帰って? そんなに荒れてる人のそばにいたら、お腹の子に悪影響だから」
……お腹の、子?
「……京香さん、妊娠してんの?」
「そうよ。最近わかったばっかりだけど」
「……ゴメン、俺のくだらない話に付き合わせて。つか立ち仕事とか平気なの?」
「ええ。むしろ、守るものができて今までより強くなった感じ」
見た目は今までとなにも変わらない、痩せたお腹に手を当てて微笑んだ京香さん。
相手、誰なんだろ……なんて、そんなこと俺には関係ないか。
京香さん、幸せそうだし。
きっとカッコよくて優しい大人の男なんだろう。
「……ならいいけど。じゃー俺帰るわ」
「うん。気をつけて。……ココちゃんのこと、私はまだなんとかなると思うから、応援してるよ」
「ありがと。京香さんは、体大事にね」