コドモ以上、オトナ未満。
「あ……」
その中にいた子猫は、痩せた体を小刻みに震わせていて、今にも息絶えてしまいそうだった。
“あたしも、いつかアンタみたいになるのかな”
彼女はそれを、いったいどんな思いで口にしたんだろう。
「どうにか、なんねーかな……」
俺はそう呟くと、箱の中の子猫を抱きかかえて自分の家に連れ帰った。
けれど、俺の腕の中で震える子猫を見た母親の言葉は……
「たぶん、何をしてもあと少しで死んでしまうから、同じ場所に捨ててきなさい」
……そんなこと、俺だって本当はわかってた。
それでも、最期くらいあたたかい場所で死なせてやりたかったんだ。
でも、口に出しても無駄だと思ったから、俺は黙って母の言葉に従った。
“捨ててきなさい”の、本当の理由に、気がついていたからだ。
あんな風にもっともらしいことを言っていたけど……
あの人はただ、猫ギライの父を怒らせたくなかったのだ。
そのときもうすでに、両親の夫婦仲は冷え切っていたというのに。