コドモ以上、オトナ未満。
4
花火大会の記憶
「……え? 大森くんって、前に駅前であった人?」
「うん、それ」
「な、なんで? ココちゃん、あの人のこと好きなの……?」
冷房の効いた学校の図書室。
六人掛けの大きな机をはさんで向かいに座るカナコが、あたしに困ったような表情を向けた。
八月に入り、そろそろ宿題に本腰を入れないと……と思っていたら、カナコから連絡があった。
“夏休み、楽しんでますか? 部活も休みに入ったから、久しぶりにココちゃんに会いたいな”
――そんな内容のメールが。
それで、とりあえず学校で会おうってことになったから、図書室に宿題を持ち込んで、雑談しながらそれを片づけていたところで……
あたしは、大森とのことを報告したんだ。
彼と、付き合い始めたって。
「好き……かどうかは、よくわかんないんだけど。一緒にいるのは楽しいかな。
いつもふざけてあたしのこと笑わそうとするんだもん、アイツ」
あたしと大森は今日までに数回デートをしていて、自分でもだいぶ親しくなってきたと思う。
アイツの通う学校がどれだけボロいかとか、クラスで流行ってるくだらない遊びの話とか、モデル仲間の誰と誰が付き合ってるだとか……
あたしの知らない大森の世界のことを聞くのは楽しくて、一緒にいて退屈だと思ったことはない。
「そのこと……真咲くんは知ってるの?」
カナコが、なぜだか浮かない表情であたしに聞く。