コドモ以上、オトナ未満。
カナコはあたしの前髪をキレイに編みこんでサイドに持っていくと、後ろの髪と一緒に束ねていったんゴムでとめた。
そして、その髪をそのゴムの周りに巻きつけるようにしてゆるいおだんごを作ると、あっという間に浴衣に似合う髪型が完成した。
「……カナコ、器用だね。浴衣の着付けもできるし、髪いじるのも上手なんて」
「こういうの、お母さんが好きなんだよね。それに、お姉ちゃんともよく美容師さんごっことかして遊んだし」
「家族みんな仲いいんだ」
「うーん。まあまあかな? たまには喧嘩もするけど」
いいな……と思わず口から出そうになって、慌ててその言葉を飲みこんだ。
そんなこと言ったら、カナコが心配するに決まってる。
今日は花火大会を楽しもうって決めたんだから、あたしの家のこと話して、暗くなってる場合じゃない。
*
「二人とも気をつけてね」
「「はーい」」
カナコのお母さんに見送られて、あたしたちは海の方へ向かうバスに乗るため、並んで歩き出した。
あたしの借りた浴衣は紺の生地に小ぶりの朝顔の描かれた、落ち着いた感じのやつ。
ピンクとかじゃなくてよかった……と思いつつ、隣でピンクの浴衣を着るカナコに目をやる。
「……カナコは、似合う」
背が低くて、歩き方とか仕草がおしとやかで。守ってあげたくなる系っていうのかな……
とにかく、女の子っぽくて可愛い。