コドモ以上、オトナ未満。
「しなきゃいけないっつーか。普通、したくなるモンだと思うけど」
「でも……あたし、大森のことまだハッキリ好きだとは……」
「キスしたら好きになるかもよ?」
大森は身を屈め、すくい上げるようにあたしを見る。
急に男っぽくなった彼に緊張して、あたしは固まってしまった。
そんなあたしに小さくため息をつくと、大森はあたしの手を取って、強く握り直した。
「……なんてな。嘘。ちゃんとココちゃんの気持ちが追いつくの待つから、んなビビんないで、傷つく」
「っ……ゴメン」
「いいって。ほらなんか食おうよ、俺ハラ減ったー」
……キスくらい、いいじゃん。大森は、こんなにイイ奴なんだから。
隣を歩くのんきな横顔を盗み見ては、自分にそう言い聞かせる。
……そういえば、あの二人はどうしただろう。
ふとそう思ったあたしは、後ろを振り返ってみる。
だけど、次々にたくさんの人が歩いてくるせいで、さっきの場所に真咲とカナコがいるのかいないのか、よく見えなかった。
大丈夫だよね。いざとなったら、ケータイあるし。
あたしはそう思い直し、大森の歩く速度に合わせて出店の並ぶ通りへと向かった。