コドモ以上、オトナ未満。
もっと、話そうよ
あたしと真咲の関係が今までよりちょっと深いものになったことを、カナコも大森も、少しも責めることはなかった。
『よかったー……私ね、真咲くんのことも好きだけど、同じくらいココちゃんのことも好きなんだよ。だから、本当に嬉しい』
カナコはそんな風に言って、心から喜んでくれたし。
『まーそうなると思ったわな。こないだ撮影した雑誌の、俺とココちゃんのラブラブ写真が載る号出たら、せーぜー嫉妬に狂えばいいんだ』
大森は、真咲にそんなことを言いつつも、あたしには『ココちゃんは、なんも気にしなくていいから』って、いつもみたいに笑いかけてくれた。
お母さんが家を出てってから、とんがってばかりいたあたし。
自然と友達は離れて行き、あたし自身も一人の方が気楽って思い込むようにしていたから、ずっと一人だった。
……あの、雨の日に、屋上で真咲と出逢うまでは。
それから恩田先生に叱られて、授業に出るようになって。
実行委員のことも、嫌々ながら引き受けたら、カナコという友達ができて。
あたしに眩しい世界のことを教えてくれる、大森とも知り合えた。
いつも穏やかな時間の流れる、京香さんの素敵なお店のことも教えてもらった。
ただ淡々とこなしてただけで、ひとつも楽しいことのないあたしの生活に少しずつ色がついてきたのは、紛れもなく真咲のおかげ。
残りの夏休みも、ときどき会っては取り留めもない話をして、別れぎわにはいつも優しいキスをくれた。
それを嬉しいと感じるようにもなったし、もしかしたらやっぱりこれは恋なのかも、と受け入れる準備もできつつあった。
でも……楽しいことを知れば知るほど、憂鬱に感じることもあった。
それは、この頃さらに帰宅時間が遅くなり、家族なのに会話がゼロの日もある、お父さんとの距離の取り方――――。