コドモ以上、オトナ未満。
「……お父さん、女の人でもできたのかな」
カリ、とシャーペンをノートに滑らせながら、あたしは小さく呟いた。
夏休みも残すところあと数日となった今日、真咲を家に呼んで宿題のラストスパートをかけるつもりだった。
苦手な理数系を助けてもらうために。
……実際は、話し相手がいると進みが悪いんだけど。
「それはないんじゃない? だって、前に“俺にはココしかいない”って言ってたんでしょ?」
「そうだけど……」
ふう、とため息をつくと、今までベッドの上に仰向けになりスマホを見ていた真咲が起き上がった。
憎たらしいことにもう宿題が全部終わっているらしい真咲は、あたしの後ろにあぐらをかいて座ると、あたしのお腹に腕をからめて、自分の方へ引き寄せた。
「……ちょっと。今、方程式といてるさいちゅ――」
「だって、ココが寂しそうだったから」
あたしの肩にあごを乗せた真咲が、耳元でささやく。
……やっぱり、宿題やるのに真咲呼んだの、失敗だったかも。
ドキドキしすぎて、全然集中できない……
「……寂しくないよ。真咲がいてくれるから」
「お。可愛いこと言ってる。もうちょい、ぎゅっとしててもいい?」
「……うん」
真咲の大きな体に包まれると、ものすごく安心する。
もう、宿題はいいから、ずっとこうしてたいな……
あたしがそう思って、真咲の体温だけに意識を集中させるため、目を閉じたときだった。