コドモ以上、オトナ未満。
「大丈夫ですよ。お父さんが、大事な娘を一人になんてするわけありません。信じて待ちましょう」
あたしがコクンとうなずくと、先生は立ち上がって今度は真咲と向き合った。
「きみのことは、あとでお家に送ります。ご家族に、連絡は?」
「……いちおう、遅くなるとだけ」
二人がそんなやり取りをしていると、手術室の扉が開いて、ガラガラと動くベッドが運び出された。
「――お父さん!」
とびつくように駆け寄ると、ベッドの上のお父さんは弱々しく微笑んだ。
「湖々……心配かけて、すまない」
「いいよ、そんなの……っ。もう、平気なの……?」
その問いには、そばにいたお医者さんが答えてくれた。
「数日入院してもらって、色々な検査をして、問題なければお家に帰れますよ」
「……よかった」
あたしはそう言うと、お父さんの手を握った。
あたしよりはずいぶん冷たかったけれど、握り返す力があることが嬉しかった。
お父さんが、元気であたしのそばにいてくれること。
それが自分にとって、こんなに重要なものだったなんて初めて知った。
あたしたち決して仲のいい親子ではなかったけれど、ちゃんと家族のつながりは、心の根っこに息づいてるんだって。
小さな頃以来、触れることなんてなかったお父さんの手に触れて、あたしはそんなことを実感していた。