コドモ以上、オトナ未満。
その日はお父さんを病院に残して、あたしは真咲と一緒に恩田先生に家まで送ってもらった。
夜更けに着いた家で、明日病院にに持って行かなきゃならない荷物をまとめるために、あたしはお父さんの寝室に入った。
普段なら絶対に入らないその部屋には無駄なものが一切なくて、ただ眠るだけのためにある部屋って感じだ。
そんな殺風景な部屋のクローゼットを開けて、適当な着替えを探していたあたしだったけど、たまたまのぞいた衣装ケースから出てきた写真のせいで、動きが止まってしまった。
「これ、いつのだろ……」
あたしの手の中にある写真には、まだお母さんがいた頃の家族三人が、笑顔で写っていた。
前はこんなに幸せそうだったのに……
あたしが焦点を合わせたのは、お父さんに寄り添って微笑むお母さんの姿。
どうしてお母さんは、お父さんとあたしを捨てたんだろ……
新しい恋人ができて、家族が邪魔になった?
……そうとしか考えられないよね。
お母さんがこの家を出て行った日、家までその男の人が迎えに来たんだもん。
そう……だから、あたしは幼いながらに思ったんだ。
お父さんには、あたしがいてあげなきゃって。
でも、いつしかその気持ちは薄れて、ときどきお父さんの存在が疎(うと)ましくて……
あたしがそんな態度だから、お父さんの体調が悪くなったのかもしれない。
明日、病院に行ったら、謝ろう。
それから、正直に話してみよう。
――あたしに、真咲っていう大切な人ができたこと。
お父さんに対してこんな素直な気持ちになれたのも、たぶん真咲のおかげだから……