コドモ以上、オトナ未満。
誕生日に壊れるモノ
二学期が始まると、学祭の準備が本格的になってきた。
ホームセンターで大きな板を買ってきて、男子が大工仕事でそれをつなぎあわせたら、カナコの下絵をもとに、あの夕陽の絵を描き込んでいく。
その頃にはあたしを悪く言うクラスメイトはもういなくて、それどころかあたしの周りに人が群がるようになっていた。
その理由は、八月の終わりに発売された、例の雑誌。
「岩崎さんて、いつもどこで服買ってるのー?」
「大森賢人くんの連絡先とか知ってる? 知ってるなら紹介して欲しいな!」
……なんて、正直ちょっとメンドクサイ質問をされることが増えた。
たぶん一学期のあたしなら完全に無視してただろうけど、今は受け答えくらいはすることにしている。
だって、あたしがクラスの誰かと話してると、あからさまに嬉しそうにするんだ。
恩田先生も、カナコも、それから、真咲も。
彼らをがっかりさせたくないから、って理由でクラスメイトと話すのはなにか違うのかもしれないけど、きっかけはどうであれ、最近は自然と教室に溶け込んできた気がするから不思議。
前のあたしは確かに、みんなの言う通り、女王蜂だったんだ。
針があるものに近付きたくないのは当然。
それが少しは丸くなってきたから、こうして平和な今があるんだ。
――そんなことを考えながら、放課後の教室で、板に色をつけていたときのこと。