聖ヨハン学校の日常
「荒木くん、よろしくね」
入学式を終えて案内されたこれから一年間過ごす教室で一人の女の子にそう言われた。僕はなんとなく笑って、うん、と答えた。すると女の子は甲高い声を教室中に響かせたのを合図に、どんどんと色んな女の子に自己紹介をされた。
正直言って、ルックスにはけっこう自信があったりする。まつげも長いし、目も大きいし。まぁ、こんなこと絶対口には出せないけれど。
しばらく色んなクラスメートと会話をしていると、担任が入ってきた。
担任が教室に入るなり、数人の女の子がひゃあ、と歓喜の声を漏らした。
「やった!高宮先生!」
そう言う子達はきっと小学校受験をして上がってきた子だろう。
その高宮という先生は名前を呼んだ女生徒に、にっこり笑いかけた後、クラスの生徒を見渡した。
「えっと、僕がこのクラスの担任を務めます………」
そこで言葉を切るなりチョークを手に取る。よくある自己紹介だ。
「高宮 駿 です!」
黒板にはでかでかと、高宮 駿<タカミヤ シュン>と書かれた。
「科目は生物を担当します、これから一年。よろしくね」
容姿端麗という文字が似合いすぎる高宮先生。最後のスマイルに初見の女生徒ですら彼の虜になっているものは少なさそうだった。
なんとなく、先程までちやほやされていた分悔しい。まるでこの先生は自分が容姿端麗なのをわかっていて綺麗な笑顔を振りまいてるのかと思うほど。
つまんない。そう、僕はこころの中でひとりごちた。