聖ヨハン学校の日常


硬く目をつむって暗闇に包まれた。何が起こるか、そんなことを考えるのは刹那。

額に、コツン。と。

何が起こったのか分からなくて目を開けた。
開けなければよかった。

目の前に黒山の顔が。苦しそうな、悲しそうな…どちらにせよ良い顔ではない。
そんな顔で私に額と額をくっつけていた。何がしたいんだこいつは。パニックになり私の心はキャパオーバー寸前。
私がさっき考えてしまった甘いそれは訪れなかった。
だけども、伏せられた黒山のながいまつ毛。絡み合う吐息。ちょっとでも動けば触れ合ってしまいそうな…。

黒山は、ゆっくりと私の左頬に顔をうずめるように沈んだ。肌と肌が触れ合うせいの熱さだけじゃない熱さが襲う。
黒山の無駄にながい髪がひっついて鬱陶しい。

「僕と似てるから…君には逃げないで欲しい。…逃げてばかりじゃ僕みたいになってしまうから。君には幸せになって欲しい」

また、わけのわからないこと。そんな事…知らない。私の幸せなんで私でさえ分からないしこの先に幸せと思える時が来るのかさえも。僕みたいに、だなんて。こいつは一体何があったんだ?

幸せじゃないのだろうか。

こいつの事をもっと知りたい。

ただ、この言葉は私にだけに言われた言葉ではなさそう。
私は変な期待を抱いているけれども、こいつが抱きしめているのはきっと私じゃないだろう。
きっと、若き日の黒山自身。

私の心に、重たい重たい鉛がポチャン、と沈められたような気がした。


< 8 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop