アイドルなんて、なりたくない<font color=
「麻衣、お祖母ちゃんを怒らせるの?」

耳元でボソリと言うと

「‥‥‥‥‥‥」

沈黙の後に

ガバッと麻衣は起き上がった。

木下麻衣は、優衣の妹で中学二年生である。

普通の女の子みたく、アイドルやらイケメン俳優に熱も上げているし、今時の女の子らしい子だ。

しかし、三才になった直後に小児喘息にかかり、苦しい日々を送ってきた。

原因は、都会の汚れた空気だった。

治療するなら、どこかの田舎にある施設に預ける話も出ていた。

家族揃って田舎に引っ越すのが、一番よいのだが、その頃にはもう、都会を離れられない事情があったのだ。

優衣にとっては、『娘とソレ、どっちが大事なの?』

言いたいところだが、当時四歳だった。

他の子供よりか、妙に大人びてはいたのだが

まだまだ単純な素直な女の子だったので…

結局、うまい具合に丸め込まれたのだ。

そうして、麻衣を病院施設に入れてみようと手続きをしようとしたら

「おい!待たないか!


辰之助から待ったが入った。
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