アイドルなんて、なりたくない<font color=
静が、にっこりと笑う。

この笑顔が恐いのだ。

「はぁい、ごめんなさぁい」

麻衣は、肩を竦めて舌を出す。

静は優衣にも

「優衣も笑ってはだめよ」

と、やんわり注意する。

「はい、ごめんなさい」

素直に謝ってから

「いただきます」

と手を合わせる。

辰之助も新聞をたたんで

「いただきます」

と手を合わせる。

四人での食事

優衣と麻衣が、この家に来てから、ずっと続いていた。

誰も必要な事以外は話さない。極めて、静かな食卓である。

だから、朝のニュース等は、よく響いている。

かと言って誰も見ている訳ではない。あくまで、耳で聞いているだけだ。

しかし、この日は、いつもの通りには行かなかった。

きっかけは…

『女優・秋山レイナさんが、急病の為、本日予定しておりました生出演が中止になりました』

というアナウンサーの言葉だった。

一同、箸を止めてから、テレビ画面に釘づけになる。

『所属事務所の高山麻美社長の説明によりますと、秋山レイナさんは、数日前から体調が、すぐれなかった様子で、昨日の夜に自宅にて倒れたとの事です』
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