アイドルなんて、なりたくない<font color=
続いて

「洸太、おはよう」

優衣が挨拶をする。

「おぅ、おはよう」

洸太は、項垂れながら答えた。

優衣と麻衣は顔を見合わせる。

この少年は、松島洸太。優衣の同級生であり、同じ木下道場の門下生でもある。

結構、強いのだが、優衣には一勝もした事がない。

黙っていれば、それなりの少年なのだが、あるアイドルの熱狂的ファンの為に、優衣に変人扱いされている。

その、洸太は

【はぁぁぁ】

と、大きくため息をついて

「なあ、今朝のニュース観たか?」

と、聞く。

優衣の顔が引きつる。

「…ええ、まあ」

そう言って、引きつったまま目を反らす。

洸太は、

【グググッ!】

と、拳を握り

「レイナちゃんが、レイナちゃんが、急病なんだよぅ」

涙が出そうな勢いだ。

優衣は呆れながら

「そうだったわね」

と、一応相槌を打つ。

(やっぱり来たか)

そう思いながら。

洸太は、両手の拳を握ったまま上げて

「俺が、俺が、今日の生放送をどれだけ楽しみにしていたか分かるか?」

優衣と麻衣に熱く語りだす。
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