アイドルなんて、なりたくない<font color=
「ほんと、よく分からないわね」

千里は首を傾げる。

「何が?」

優衣が聞くと

「だってさぁ、秋山レイナの話は嫌がるくせに、秋山レイナの擁護してるから」

そう言って顔を近付けて

「優衣、やっぱレイナの隠れファン?」

ニヤリと笑う。

「違うわよ」

キッパリと否定してから

「才能ある女優さんだから、応援しているだけよ」

そう言ってから、カバンから教科書等を出して机にしまう。

(本当に才能はあるのよ。でも…)

一瞬だけ顔を曇らせる。

優衣にとって《秋山レイナ》と言う女優は特別だ。

顔が似ているからというだけの単純な理由ではない。

優衣自身に深い関わりがあるのだ。

「何?何シリアス入っているの?」

千里が、好奇心いっぱいに聞いてくるが

「何でもありません!」

そっけなく答える。

そこに

「こらぁ、優衣!」

先程の正拳づきで、頬が腫れている洸太が乱入してきた。

「何?」

うんざりした顔で優衣が答えると

「お前はぁ、いきなり正拳づきはないだろうが!」

そう言って頬を指す。

優衣の拳の跡が見えるようだ。
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