アイドルなんて、なりたくない<font color=
その頃、優衣達の住む《龍神町》の唯一の駅【龍神駅】にホームに一人の少年が降り立った。

Tシャツにジーパン、運動靴、野球帽を被ってサングラス、耳にはイヤホンをしている。

彼は

「よいしょっと」

大きめのショルダーバックを肩にかけてから、階段を降りる。

改札口を出てから、タクシー乗り場に向かう。

その間、何度も人々に振り返られて

「あれって、もしかして…」

などと話したりしている人がいたり

中には、こっそり写メを撮っている人もいた。

タクシー乗り場で車を待っていると

「あ、あの…」

と話し掛ける。

「何ですか?」

笑顔で答える。

男の子らしく、低い声だ。

「な、なんでもありません。失礼します」

一礼して、走りながら逃げていく。

周囲に集まりつつあった野次馬の集団もバラバラと散りだす。

少年は

「なるほどね」

クスッと笑う。

「おっと忘れないように」

ケイタイを取り出して

【ピッピピ、ピッピッ…】

とメールを打つ。

送信ボタンを押した後

「さぁて、姉上は、どんな反応をするかな」

おもしろそうに笑った。
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