アイドルなんて、なりたくない<font color=
その空間と一体になるように、優衣は無心になる。

微動も動かず、まるでよく出来た人形のように美しい。

優衣の顔立ちは、もともとキレイに整っている。

昔から何人もの同級生に交際を申し込まれた。

しかし、一度も首を縦には振らない。

時には、力でモノを言わせようとする輩もいたが、祖父直伝の空手で、すべて撃退した。

優衣曰く

『私より強い人しか興味がでない』

だそうだ。

これは、友人のしつこい質問責めに仕方なく、それもボソっと呟くように言った言葉だ。

木下家は美形が揃っている。

祖父母も両親も弟も妹も美形揃いだ。

親のDNAが美形だから、当然の結果だが、その似方は少し複雑だ。

東京でプロダクションを経営している伯母も、国立の研究所に勤務している伯父も当然美形だ。

こんな美形なのだからと、伯母から芸能界デビューは、奨められたが

『ぜっったいにイヤです』

それはもうすごい勢いで断った。

しかし、優衣の双子の片割れは、小さい頃からモデルやら、天才子役をやっている。

優衣は、同情はしている。

確かに、その世界が好きで飛び込んだのは事実だが…

売り方が悪すぎた。
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