アイドルなんて、なりたくない<font color=
「そうだけど…」

「もうアノ仕事は出来ないんだから」

キッパリと怜が言う。

すると、二人の後ろを歩いていた麻衣が、ひょこっと前に出て

「まずは、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに挨拶だね」

にっこり笑顔で言う。

三人は障子の前に立ち、その場で正座する。

怜を前に、優衣と麻衣は、少し後ろに控えるように

「失礼します」

怜が言うと

「入りなさい」

中から静の声が返ってくる。

怜は

「失礼します」

もう一度言って、障子を開ける。

「お祖父さん、お祖母さん。木下怜、ただ今戻りました」

言いながら頭を下げる。

優衣と麻衣も、それに習って頭を下げている。

静は、にこやかに

「怜、お帰りなさい。さ、三人とも中に入りなさい」

そう言って中へと誘う。

「では、失礼します」

三人は、もう一度頭を下げてから、部屋の中に入る。

最後の麻衣が、障子を閉めてから、静の前に三人並んで座る。

静は嬉しそうに

「やっぱり、孫が三人とも揃うと嬉しいものね」

笑顔を浮かべて言う。

怜は、辺りを見渡してから

「お祖父さんは?」

と、問い掛ける。

よく見ると、辰之助がいない。
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