アイドルなんて、なりたくない<font color=
静は、にこやかに笑いながら

「旦那様は、今は道場ですよ。日課の修練をされてます」

そう答えてから

「それにしても、よく戻って来ましたね。絵里子や隆介さん、それに麻美は元気にしてましたか?」

静の問い掛けに

「はい、母さんも叔母さんも、毎日、仕事で駆けずり回ってます…それに、父さんの方も、あっちの道場を上手く経営してます」

恭しく怜が言うと、静は《ほほほ…》と笑い

「そんなに固くやらなくてもいいのよ。もっと楽になさいな。ここは怜の家で、私は怜のお祖母ちゃまなのだから」

やさしい眼差しで見つめる。

「お祖母ちゃん…」

怜が小さく言うと

「そうですよ」

静は頷いてから

「さ、そろそろ、お祖父さまが、鍛練から戻る頃ですね」

そう言って立ち上がる。

そして、ニッコリ笑って

「怜が帰ってくると思って、お饅頭を作っておいたのよ。あちらで食べましょうか」

と、庭先を指す。

庭の真ん中に、東屋がある。

「お天気もいいようですし…」

ニッコリ笑っていた静だが

「ごめんくださいませ」

玄関先から聞こえてきた声に顔が引きつる。

かじろうて笑顔は保っているが…
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