アイドルなんて、なりたくない<font color=
二人はすくみ上がった。

「あ、あの、その…」

絵里子は完全に飲まれているが、

紫の息子である隆介は

「怜が急にいなくなったから、慌てて探したんだ」

かじろうて答える。

すると、

「そうです。怜が黙っていなくなるから」

絵里子は飲まれながらも必死に答えるが

「でも、あなた方に断ってから来たら、絵里子と麻美に阻止されたでしょ?」

静が、やんわりした口調で言うが、スッと立ち

「約束でしたでしょ?」

途端に口調か変わる。

「怜が声変わりをしたら、一切の仕事から手を引かせると」

静に言われ、二人とも震え上がる。

「で、でも…」

絵里子が何か言おうとしたが

「それとも、《秋山レイナ》が実は男だと世間に公表して、怜をさらし者にするつもり?」

静にピシャリと言われて、二人とも黙ってしまう。

そう…

《秋山レイナ=木下怜》

なのだ。

こうなるに至ったのには、かなり複雑な事情があった。

芸能界を引退した絵里子こと橘香織は、演劇への未練を捨てきれなかった。

双子の優衣と怜を産まれると、我が子の生まれ持った美貌に夢は膨れ上がった。

そこに、丁度よく…
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