アイドルなんて、なりたくない<font color=
「すみません」

隆介が謝ると、紫はさらに

「謝る相手を間違えているのじゃなくて?」

厳しい口調で言うと

「そうでしたね。…怜、すまなかった。父さんが、ちゃんと言えていたら、こんな事態にならなかったのに」

隆介は、そう言って頭を下げる。

「お父さん…」

「あの頃の怜は、喜んで服を着ていたから、勘違いをしていたんだ」

そう話す父の言葉は少し重い。

「怜の人生は怜のモノだ。これからは、怜の好きなように生きればいい」

「隆介!」

絵里子は思わず声を荒げる。

だが隆介は、構わずに

「だけどね、《秋山レイナ》の幕引きは、きちんとやらなければならないんだ」

そう続けた。

「え?」

「確かに《秋山レイナ》は虚像だ。それを作り出した私達が、全面的に悪いのは分かっているよ。だから、最後の幕引きまで責任を取らなくてはいけないんだ」
「…父さん…でも、俺はもう…」

怜が戸惑っていると、隆介は

「そう、怜には《秋山レイナ》は出来ない」

そう言って目を伏せるが、優衣の方を向いて

「だから、優衣に《秋山レイナ》になってもらいたいんだ」

隆介の言葉に優衣は固まった。
< 62 / 99 >

この作品をシェア

pagetop