アイドルなんて、なりたくない<font color=
「でも…」

優衣は俯いて

「嫌だったんでしょ?女装するの。大体、私が小さい時にモデルを嫌がらなければ怜が女装する必要なんか…」

そう言って優衣が唇を噛むと

「嫌々したって誰も喜ばないさ」

「怜…」

「そりゃ、女の子の格好は嫌だったけどさ、仕事は好きだったよ」

そう言って怜は優衣の隣に座る。

「結構さ快感でもあったんだぜ。周りが女の子だと信じているのが実は男だって。周りを騙せば騙す程楽しかったよ」

そう言ってから肩をすくめて

「ま、多少はキツかったけどさ」

クスッと笑ってから真顔になって

「でも、どんな理由があろうと後始末は自分でやらないとならないんだよな」

暗い声で言ってから

「優衣、ごめんな。俺の尻拭いさせようとして」

優衣に向かって頭を下げる。

「ちょっ、ちょっと、怜」

優衣が明らかに動揺している。

「でも、《秋山レイナ》をきちんと終わらせたいんだ。だから、頼む!」

怜から頭を下げられて、優衣が戸惑ってしまう。

優衣は分かっている。

怜と母が《秋山レイナ》に対して、どれだけの思い入れがあるのか。

あの祖母でも折る事が出来なかった想い。
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