アイドルなんて、なりたくない<font color=
それは、充分すぎる程分かっている。

「でも…」

優衣が小さく呟き

「いきなり《秋山レイナ》をやれって言われても困るよ。私だって、怜やお母さんのレイナへの思い入れは分かっているよ。分かっているけど…」

「そんなに嫌なら無理強いはしないさ。無理にさせたら、優衣やレイナを応援してくれてる人達に嫌な思いさせるだけだし」

怜は天井を仰いで

「レイナは、理想の女の子なんだ。老若男女問わずに誰もが憧れる。無理にやらせたら、それを壊してしまう。そんな位なら、夢の途中で終わらせた方がいいさ」

「怜、あなた…」

「これは、俺や母さんのワガママなんだよ。《秋山レイナ》という“夢”をちゃんと終わらせるって」

そう言ってから、もう一度優衣を見て

「優衣が、どうしても嫌なら言っていいんだよ。優衣の人生は自分で決めていいんだよ。お祖母ちゃんだって言っていた」

「お祖母ちゃん?」

「『怜の人生は怜のモノだから、お前の思う通りに生きなさい』ってね」

「…そうなんだ」

「だから…」

怜が言い掛けたその瞬間に

【バタン!!】

大きな音と共にドアが開く。

そして

「何言ってるの!」
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