アイドルなんて、なりたくない<font color=
麻衣が大きな声を上げて入ってくる。

「麻衣?」

優衣と怜が驚いた顔をしていると

「何言っているのよ、優衣ねえ!こんな機会は滅多にないのよ」

言いながら麻衣は優衣に詰め寄ってくる。

「ま、麻衣、あのね…」

優衣が必死に宥めようとするが、

「優衣ねえったら何も知らない。《秋山レイナ》が、みんなにとってどういう存在か!どれだけ必要とされているか!」

次第に麻衣に圧倒されていく優衣。

だが、麻衣は表情を曇らせてから

「私のせいなの?」

俯いて言う。

「麻衣、そんな」

「私が、女優になりたくても、病気でなれないから?」

「違うわ。私が…」

「そんな事、絶対に許せないよ!そんな同情されたって、みじめになるだけだよ!」

思いっきり、強い口調で言うと、優衣は驚きながらも

「麻衣、そんなんじゃないわ。私は、そういう活動は嫌いなの。麻衣の事は関係ないの」

否定の言葉を返したが

麻衣は、グッと手を握り締めて

「…やらなきゃ絶対に許さない」

小さく呟く。

「麻衣?」

優衣が立ち上がり麻衣の肩に手を置く。

【カタカタ…】

麻衣は、手を握ったまま震えていた。
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