アイドルなんて、なりたくない<font color=

『溺愛』

紫に連れられて、優衣は秋山家のお屋敷にやってきた。

龍神町の端にある秋山家は、広大な広さの庭と荘厳華麗な造りの屋敷がある。

最高級の庭師が、その技術のすべてを注いだという庭は、見るものすべてを魅了する出来であり。一年中、花が咲き乱れている。

その一角に、白い大理石で出来たテラスがあり、中には大理石のテーブルと美しいフォルムの椅子が四脚据え付けられている。

紫によって白いワンピースに着替えさせられた優衣は、落ち着かない様子で椅子に座っていた。

(いつ来ても、ここは異世界だなぁ)

そう思いながら、ため息をつく。

龍神町に引っ越ししてきた時、優衣は

『わぁ、ここはお姫さまのお城みたいだね』

と、妙にはしゃいだものだった。

まるで、お伽話の世界に迷い込んだような、そんな錯覚をする位に、この屋敷の造りは見事なのだ。

(小さい頃は、よく麻衣と二人で探険したけれど、結局迷って泣きながら大お祖父様に助けられたっけ)

クスクス、と思い出し笑いしていると

「楽しそうだね」

男性の声に優衣は、

「大お祖父様」

声の主に言う。

この屋敷の主であり、優衣達の曾祖父でもある秋山慎吾である。
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