アイドルなんて、なりたくない<font color=
体の弱い撫子を二人は背負って、町の中を探険していた。

そして、成長するにしたがって三人の関係が微妙に変わった。

慎吾と秀吾は、撫子にほのかな想いを寄せていた。

撫子も、それに気付いた。

そして撫子が、その手を取ったのは秀吾だった。

慎吾の悲しみは、たとえようもなかった。

しかし、従兄弟であり親友でもある秀吾と愛する撫子を心から祝福した。

そして、自分は親の決めた婚約者と婚姻を結んだ。

だが、その時代は戦争の真っ最中であり、秀吾には召集令状が届いた。

そして、出征の日

まるで今生の別れのような、撫子の悲しい顔を忘れはしない。

―そして、秀吾は帰らぬ人となった。

まだ撫子との婚姻は済ませていなかったので、通知は秋山家に配達された。

慎吾は、手紙を握り締めて、蒼龍神社へと走った。

こんなに必死になって走った事はない。

それでも慎吾は走り続けた。

そして、鳥居が立ち並ぶ長い階段を必死に上っていると、一番上に撫子が立っていた。

すべてを悟ったような表情で。

慎吾は駆け寄り

「はぁっはぁっな、撫子…」

息を切らせながら、名を呼ぶと

「慎吾さん…通知が来たのですね」
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