アイドルなんて、なりたくない<font color=
朝食が、お膳の上に並ぶと

「優衣、麻衣を起こしてきてくれない?」

おっとりと言う。

「はぁい」

返事をして居間を出る。

途中で新聞を持った辰之助に会い

「お祖父ちゃん、ご飯出来てるよ」

すれ違い様に言う。

先程とは話し方が違うが、それは、道場と外を分けているからである。

道場内では、あくまで師範代と弟子であり

道場から出ると、祖父と孫娘になる。

祖父は、孫娘の成長を満足気に見ている。

こういう人を

『じじばか』

と言うらしい…

優衣は二階に上がり、手前の部屋の襖を、ガラリと開ける。

まだカーテンは閉じていて薄暗いが、部屋の中にはアイドル等のポスターが、そこらじゅうの壁に貼りまくっている。

だが、女の子らしく人形やら、可愛い小物も飾っている。

「麻衣、朝だよ」

そい言いながら体を揺り起こす。

「んん、まだ眠いよ」

布団の中で、テンション低めな声がする。

「早く起きないと遅刻するよ」

そう言って体を揺さ振るが

「やだぁ」

駄々をこねているようだ。
優衣は深呼吸してから
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