アイドルなんて、なりたくない<font color=
慎吾は、生まれてきた静を自らの養女として迎える事を申し出た。

その頃には、慎吾にも紫という娘が生まれていた。

しかし、その申し出を圭子は断った。

静は、蒼龍神社にて育てると。

慎吾は粘ったが、圭子にかなう筈がない。

せめてものと、紫をよく蒼龍神社に行かせた。

慎吾の想いが通じたのか、紫と静は、姉妹のように成長をした。

二人を平等に扱い、何をするのにも一緒にした。

そうして慎吾は二人を見守ってきたが…

絵里子が、優衣と怜を産んだ時に予感が走った。

すぐに生まれたばかりの二人を見た瞬間

「撫子」

慎吾が思わず漏らした言葉だった。

撫子に生き写しの姉弟。

神の悪戯か…ただの偶然か…何かの暗示なのか…

慎吾の頭の中で、いろいろと思いが走ったが、

目の前にいる娘が光輝いているようだった。

いつも撫子を包み込んでいた優しい光が。

(あぁ…撫子、戻ってきてくれたのだね)

その日から慎吾の心は、可愛い曾孫に奪われた。

二年後に生まれた孫は、今度は紫によく似ていた。

まるで、静と紫が幼き頃に戻ったような錯覚を覚えてしまう。

優衣と麻衣が、龍神町に越してきてからは、なおさらだった。
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