薔薇の香りと共に
暫く待っていると、さっきの執事さんが銀のトレイ台を押しながら戻ってきた。
目の前で注がれる紅茶が、甘くて優しい香りを漂わせてる。
「どうぞ。冷めないうちにお召し上がりください。」
「あ、ありがとうございます…」
さっそくティーカップを持って口に近づけ、傾けると…
わぁ…
「美味しい…!」
「それはよかった。」
つい漏らした私の声に、彼はにこりと薄く笑った。
わ、笑顔…綺麗だな。
綺麗な金髪と淡い青の瞳、改めて見ると、燕尾服がよく似合ってる。
彼は、ポケットから時計を取り出すとカパッと開いて時刻を確認した。
「ユエ様。クラウス様のところへご案内致します」
彼は胸に手を当てて一礼した。
クラウス……私の、お父さん…
これから、会うんだ。
「わかりました、お願いします。」
「では、参りましょう。」
ドアを開けて促す彼に、私は肩掛けのバッグの紐をぎゅっと握って歩き出した。