薔薇の香りと共に
曲がり階段を上り、三階へ。
その階段の突き当たりの部屋で、彼は立ち止まった。
執事の彼がコンコンと扉をノックする。
すると、どうぞ。という男の人の声。
ガチャリと扉を開け
「失礼します。ユエ様をお連れ致しました。」
「あぁ、ご苦労。入りなさい」
低くて、落ち着きのある声…
「どうぞ、お入りください」
執事の彼が先程と同様、扉を背にして私を促す。
ゴクリと固唾を飲み込んだ私は、室内に入った。
私が入ったと同時に、広々とした室内の奥、大きなデスクの先で、縦長い窓の前に立ち外を眺めていた背の高い男性が振り返った。
窓の光に反射した金の髪。
見る者を射抜くような冷たい青い瞳。
黒い上品なスーツに身を包んだ彼を見て、なんてスタイルがいいんだろうと思った。
彼と目が合った瞬間、時が止まったような感覚がした…。