薔薇の香りと共に
「まず、ミッドフォードのことから話そうか。
この家はね、昔から裏社会に深く関わりがあるんだ」
「裏社会…?」
「そう。金融関係とかいろいろとね」
「でも、ホテルとか…」
「そういう表立ったこともやってるね。会社だっていくつかあるし、僕だって芸能界で生きてるわけだから。
まぁ、それらは裏の顔のカモフラージュとでも思ってるといい」
裏の顔のカモフラージュ……
私、もの凄いところに来てたりして…
「俳優やってることも…そうなんだ…?」
「…そうだね。僕には兄がいて、家を継げないことは分かりきってたから。
僕は、所謂ミッドフォードの宣伝役みたいなものかな」
宣伝役……
「嫌じゃないの…?」
「嫌だと思ったことはないな。日々学ぶことは多いし、やりがいがある仕事だと思っているよ」
「そうなんだ…」
なんだか、ちょっとだけ安心した。