薔薇の香りと共に

「役者をやっていたからこそ、レイコとも出逢えたんだよ」


「お母さんと…?」


「ああ。まだ僕が駆け出しの役者だった頃、ミッドフォードが日本に進出したんだ。その時、日本のとあるスタジオでCM撮影をしたんだよ」


「…そのCMっていうのは、ミッドフォードのホテルの宣伝…とかの?」


ミッドフォードの経営してるホテルの宣伝のCMやポスターには、今でも彼が使われている…


「そう。それで僕がそのCMに出ることになってね。それがきっかけで、当時業界で働いていたレイコと出逢ったんだ」


「そうだったんだ…」


お母さんが昔、芸能界で裏方の方で仕事をしていたのは知ってる。


まさか、それでふたりが出逢ってたなんて…


「ミッドフォードがある程度日本で有名になるまで僕も日本に滞在することになってね、レイコと交際を始めたんだ」


「その、滞在の理由って…宣伝役として?」


「そう、宣伝役で。」


私の問いに彼はクスリと笑った。


綺麗な顔…未だに緊張する…。
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