薔薇の香りと共に
第一章
─ Truth ─
私、東雲 月【シノノメ ユエ】に父はいない。
そう、思ってた。
ずっと母と2人暮らしで、なぜ父がいないのか、その理由を知ることはなかった。
何度聞いたって教えてくれなかったから。
私を産む前に離婚したのか…、それとも結婚すらしていないのか…。
あるいは…
もう他界しているのか………。
いろいろと連想したけど、真実を知らないまま、もう16年が経とうとしている。
だけど、“父は生きている”突然そう母に告げられた。
私が、そんな母の言葉で父の存在を知ったのは、ほんの数ヶ月前のことだった。