薔薇の香りと共に
「そうして…数年後、君が産まれた。」
「…結婚は、しなかったの…?」
「…僕はプロポーズはしたよ。けど、レイコにフられてしまったんだ」
「え…?」
目を伏せて切なげに微笑む彼。
嘘を言っているとは思えなかった。
「君が産まれた頃には、もう僕の役目も終わってね、イギリスへ帰らなきゃならなかった。」
「日本にいることは…できなかったの?」
「できなかった。次男で家も継げない僕だけど、ミッドフォードを出ることは許されないんだ。」
「ど、どうして…?」
「それは、これから話すよ。君にも関係のあることだからね。」
私にも、関係のあること……?