薔薇の香りと共に
「ユエ」
改めて名前を呼ばれて、思わず肩がビクついた。
「君は、どうしてここへ来た?君の気持ちを教えてくれるかな?」
これは、私の気持ちの確認だと思った。
だから…
「私は…全てが知りたかったから来たの。今まで音信不通だった父親のことや…私の知らない全てを知るために」
彼の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「そうか。初めに僕は言ったよね、僕のことと、君のことを教えてあげると」
「うん…」
「今から君が知りたがっているそれを話すわけだけど、これは決して他言してはならないことだ。
それと、聞いたら最後、もう日本での元の生活には戻れないかもしれない。それでも僕は君に話さなきゃならないけど、いいね?」
元の生活……お母さんと暮らすこと…?
それとも、高校に通うことができないということ…?
どの道、もう後には引けないってことなの…?
「……話を聴く前に、ひとつだけ聞いてもいい?」
「何だい?」
「お母さんにも…会えないの?高校の、友達とか…会いに行くことすらできないの?」
「会うという行為は可能だよ。君が以前のように皆と接することができればの話だけどね。
だから、会える 会えないかは君次第だ。」
私次第か……私、その時どうするのかな…
「心の準備はいい?」
「ぁ、うん…」
「それじゃあ、話すね、全てを」