薔薇の香りと共に

「ユエ」


改めて名前を呼ばれて、思わず肩がビクついた。


「君は、どうしてここへ来た?君の気持ちを教えてくれるかな?」


これは、私の気持ちの確認だと思った。


だから…


「私は…全てが知りたかったから来たの。今まで音信不通だった父親のことや…私の知らない全てを知るために」


彼の目を真っ直ぐに見つめて言った。


「そうか。初めに僕は言ったよね、僕のことと、君のことを教えてあげると」


「うん…」


「今から君が知りたがっているそれを話すわけだけど、これは決して他言してはならないことだ。

それと、聞いたら最後、もう日本での元の生活には戻れないかもしれない。それでも僕は君に話さなきゃならないけど、いいね?」


元の生活……お母さんと暮らすこと…?


それとも、高校に通うことができないということ…?


どの道、もう後には引けないってことなの…?


「……話を聴く前に、ひとつだけ聞いてもいい?」


「何だい?」


「お母さんにも…会えないの?高校の、友達とか…会いに行くことすらできないの?」


「会うという行為は可能だよ。君が以前のように皆と接することができればの話だけどね。

だから、会える 会えないかは君次第だ。」

  
私次第か……私、その時どうするのかな…


「心の準備はいい?」


「ぁ、うん…」


「それじゃあ、話すね、全てを」
< 22 / 43 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop