薔薇の香りと共に
その冷たい瞳に、息が詰まりそうになった。
あ、あれ…でもさっき…
「でも…いたって、ことは……結局、今はもう、いないんでしょ…?」
「まぁ、いないものと思ってるだろうね、人は。」
私には、この人が何を言いたいのか分からない……
「どういうことなんですか…」
「分からないかな…。ヴァンパイアだって言ってるんだよ、君の父親は。」
そ、んな……そ、それじゃあ、私は……
「君は、ヴァンパイアと人の混血児ということだ」
私が…ヴァンパイアの…?
そんな、そんなのって……
有り得ない…信じられないよ……
「じょ、冗談でしょう…?」
「僕は冗談なんて言っていないよ」
「そ、それじゃあ…あなたは、本当にヴァンパイアだっていうんですか?」
「あぁ、そうだよ。ミッドフォードの者は皆、古よりヴァンパイアの血を引いている。」
「そ、んな……」
「近年は、その血もだいぶ薄まってるけどね。何故だと思う?」
「…なぜ……?」
「僕みたいに人間と交わるから。純血のヴァンパイアなんて、今はとても少ないと聞いてる。
血を濃くする為には、兄妹婚なんかが方法として挙げられるけど、別にそんなこと僕らは望んでないからね」
「血が…薄まっても、いいってことですか…?」
「…まぁ、頑なに駄目だとは思ってないね。“ミッドフォードでは”の話だけど、僕らはそれに関しては重視していないから。
他者には濃い血を守ろうとしている所もあると聞いているよ」