薔薇の香りと共に
「そんなことって…」
「有り得ることなんだよ。君はまだ開化してないから、分からないだろうね」
「え…?」
「ヴァンパイアの血を引いていることを自覚しようもないだろうってことだよ。
何せ、血を呑む習慣なんてなかっただろ?」
「そ、そんなの当たり前です…!!」
自分がヴァンパイアの血を引いているなんて想像すらしていなかったのに……
「だけどね、ユエ。事実は事実だ。君は僕の娘で、ミッドフォードの者だよ」
「……」
この事実を受け止めるしかないのだろうか……
「あの、このことは…お母さんは…」
「勿論、知ってるよ。だけど、友達にはとても話せないことだろ?
僕が初めに言った言葉の意味、わかったかな。今まで通りには無理に等しいだろ?」
そんなこと、当たり前だ…。
もう、顔を合わせることすらできないかもしれない…。
「私…これからどうしたら……」
私も人の血を呑むことになってしまうの…?
気づいたら震えていた両手を見つめていると、その手に横から指が長くきめ細やかな白い肌の大きな手が重なった。
それにハッとしたのも束の間、私の手は優しく握り締められた。
いつの間に移動したのか、私の横に腰掛ける彼に目を向ける。