薔薇の香りと共に
正面の螺旋階段を下り、一階の奥。
「ここは、食堂。食事はここで取ることになるからね」
「わ、わかった…」
彼が両開きのドアを押すと、扉の向こう側から仄かに薔薇の香りが漂ってきた。
室内に入った私の目には、4人の綺麗な少年が映り込んできた。
彼らは…?
「遅いよ、クラウスさん。」
「ほんと、待ちくたびれちゃったよ~」
みんな日本語を話してる……
「ごめんね。簡単に済む話じゃないから、そこは勘弁してくれないか」
と、苦笑した彼は私の目の前から横に移動して私の背に手を当てた。
「皆、紹介する。僕の娘のユエだ。これから慣れない生活を送っていくことになるから、いろいろと気に掛けてあげてほしい」
彼の言葉に少年達の視線が私に集まる。
「あぁ。てか、いくつなんだよ?」
ハニーブラウンに近いプラチナブロンドの髪に、赤い瞳をした少年が、そう言って軽く首を傾ける。
なんて綺麗な顔なんだろうと見とれている私の代わりに
「今日で16になるんだ。」
「なんだ、じゃあ俺と同い年じゃん」
と言った彼は寄りかかっていた大きな縦長いテーブルから体を起こすと私に近づいてきた。